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対談 | CHART project

サステナブル・コットンから
水のサステナビリティを考える

chart project × WWF Japan

人と自然が調和して生きられる未来を目指し、世界的に活動する環境保全団体のWWF。このたび、chart projectと、WWFジャパン公式オンラインショップ「PANDA SHOP」が一緒に取り組むのは、サステナブル・コットンを用いた作品制作を通じた水環境保全の普及啓発です。なぜ、今サステナブル・コットンが注目されているのか。それは、危機的な状況にある地球の水資源が深く関係しています。詳しいお話をWWFジャパンのオフィスでお伺いしました。

危機に直面する世界の”水”

 

202211

WWFジャパン淡水グループ小林俊介さんにWWFジャパンが取り組むプロジェクトのお話しを伺った。

 

私たち地球の生命が生きていくのに欠かせない水。それらを支えているのは、雨水を保水し、適切な量を河川に供給する森林や、排水を濾過し健全に保っている生物の存在です。ところが、これらの生態系の破壊により、河川の氾濫、水質汚染や水不足など、これら水の問題は年々深刻度を増しています。
人と自然が共存できる未来のため、100か国以上でグローバルに活動するWWFも率先して淡水域の生態系の保全に取り組んでいます。


淡水域は最も生物多様性の高い生態系の一つで、地球上の10%(全脊椎動物種の約1/4)の種が生息しています。WWFの「生きている地球レポート」の報告によると、1970年から2022年の間に淡水域の生物の個体数は83%も低下しており、最も危機的な状況にある生態系のひとつと言えます。


さらには、地球温暖化など地球規模での環境変化による影響も近年は顕著で、赤道周辺の乾燥地帯は常に渇水のリスクに晒されるほか、 2022年に国土のかなりの部分が水没したパキスタンの大洪水は記憶に新しく、多大な被害が生じました。日本も例外ではなく、過去に比べ水害は年々増加傾向にあり、予断を許さない状況です。

 

また、水の問題が影響を及ぼしているのは私たちの日常生活だけではありません。多様な産業に使われる水を汚染や枯渇から守り、保全することは、企業にとっても非常に重要です。そこで、WWFジャパンはビジネス界に働きかけ、淡水地域の生態系の保全や水資源の利用に関する提言を積極的に行っています。

 

 

なぜサステナブル・コットンに着目するのか

 

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PANDA SHOP で販売している綿製品は OCS 認証や GOTS 認証など全てオーガニック・テキスタイル認証を取得している。

 

多くの企業が水資源を利用する中でも、一二を争う量の水を利用しているのが繊維産業です。洗濯や染色のためには多量の水が使われ、用水汚染の17〜20%は繊維産業による染色と仕上げによるものであると推定されています。特に、コットン=綿の原料となる綿花は、水資源の乏しい乾燥地域で育つ特色を持ち、栽培の過程では他より多くの農薬や殺虫剤を必要とするとも言われています。このように、繊維産業の中でも、コットン製品は加工の工程だけでなく、原料生産の段階から多くの環境負荷が特に生じているのが現状です。

 

このような製品の原材料の栽培・生産、製造・加工、輸送・流通、消費、廃棄・ リサイクルまでのライフサイクル全体での水環境への負荷を示す指標のひとつに「ウォーターフットプリント(以下、WF)」があります。
環境負荷の大きさ、つまりWFの大小は、m3という単位で表され、国別の水利用の現状把握や水に関するリスク評価にも用いられます。


日本のWFを見てみると、畜産業の次に繊維産業が大部分を占め、その中でもコットンのWFが繊維産業の95%と圧倒的な部分を占めています。コットンのTシャツを1枚つくるのに必要な水の量は2500Lとも言われています。そのコットンのほとんどを海外からの輸入に頼っている日本が、世界に負う水負荷はかなり高く、その責任から逃れることはできません。
このままコットンの消費が日本で続けば、乾燥地帯の過剰な水利用により河川の水位が下がり、その地域にすむ生物多様性が失われたり、人々の生活が損なわれたりすることにもつながってしまうことでしょう。

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水環境は森や山岳地帯、湖、海などひとつの大きなつながりを持っている。限られたエリアで保全ではなく、水のつながりを意識した保全が必要と小林さんは話す。

 

こうした繊維産業をとりまく現状の中で、淡水域の生態系を保全しながらサステナブルなコットンの生産を目指す活動が広がっています。生産過程における農薬や過剰な水の利用を最小限に抑えるだけでなく、染色による排水の処理などに十分な配慮をしたコットン生産の動きも出てきました。

 

WWFジャパンもサステナブル・コットンの普及に積極的に取り組んでいます。繊維企業とパートナーシップを結び、協働して水リスク低減について理解を深めたり、サステナブル・コットン調達に向けた目標設定と実現のためのアクションに対して伴走を行っています。また、WWFジャパン公式オンラインショップ「PANDA SHOP」で扱う製品のために調達するコットンについても、2021年にはサステナブル・コットンへの切り替えが完了しました。

 

 

chart project®×WWF手に取れる製品で環境問題を身近に

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PANDA SHOPのオーガニック・コットンを使用した製品を手に取り、今回、chart projectで制作する作品のアイディアを膨らますchart projectメンバーで、デザイナーの藤田。

 

サステナブル・コットンの普及に向け活動を続けるWWFジャパンが、現在取り組んでいるのが、製品を通じたサステナブル・コットン製品の開発です。

 

「今後、私たちが水環境の課題解決に向けてできることは、より多くの企業だけでなく消費者に対して、サステナブル・コットンの価値を正しく理解していただけるよう伝えていくことだと考えています。このような内容は文字や言葉だけで伝えるのが難しいと私たちも日々実感しています。chart作品を用いながら伝えることによって少しでも多くの方の目に留まり、水環境について考えるきっかけになればと思いご一緒することにしました」

と、WWFジャパンのPANDA SHOP担当の梶川さん、淡水グループの小林さんは語ります。

 

「環境問題について伝える時は大々的に何かやるよりも、色々なところでふと考えるきっかけをつくることが大切。今回の製品づくりもそのきっかけのひとつです。これまでのアプローチでは消費者の方々への広がりや意識変容にも限界がある中でユニークなchart作品を用いることで、一見『難しそうだな』と思われがちな環境問題について少しでも敷居を下げ、より多くの方に身近に感じていただけたら、と思います。」

 

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左から、WWFジャパン PANDA SHOP池田雅子さん、淡水グループ小林俊介さん、PANDA SHOP梶川美智子さん、chart project藤田。

 

 

「手ぬぐい chart project®・コラボ OCS認証」の購入はこちらから。(外部リンク:PANDA SHOP)

 

撮影:堀篭 宏幸  編集:つじはら まゆき

 

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