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GALLERY | SDGs in ISHIKAWA

かさなる海の森

竹村 美紅

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ABOUT ART

能登地域には、多様な海藻が育まれる豊かな海があり、四季折々にその海藻を食べるすばらしい食文化があります。珠洲市の藻場面積が広大ということだけでなく、種類豊かな海藻が着生している様子を、 グラフを利用した直線を重ねて表現しました。藻が作る豊かな海の森が、これからもずっと広がっていきますように。(竹村 美紅)

ABOUT GRAPH
珠洲市の藻場面積

海藻・海草の森「藻場(もば)」。魚の産卵場所や隠れ家になるなど、海の生態系において重要な機能を担っていますが、その面積は世界的に減少し続けています。要因として、人間の経済活動による水質悪化や海岸線の改変等が大きく関与していると考えられています。能登半島沿岸の藻場は、海域単位で全国1位の面積(9,423.5ha)を誇り、絶滅危惧種の海洋生物も多数生息するといわれます。 | 出典:環境庁(1998)第5 回自然環境保全基礎調査(海辺調査) | グラフ提供:珠洲市

竹村 美紅

金沢美術工芸大学 視覚デザイン専攻(作品制作当時)

石川県金沢市生まれ。自分の手の感触が残る造形にこだわって、イラストレーション、パッケージデザイン、映像作品など幅広く制作しています。
幼い頃に夢中になったたくさんの絵本がものづくりの土台になっていると感じます。今でも絵本を読んだり集めたりしています。
Instagram:@miku_takemura

MAKING STORY

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立山連邦が見渡せる石川県珠洲市の蛸島漁港

 

 

「SDGs未来都市」珠洲市の課題を美大生がchartに

 

2019年5月より石川県内の各地域で展開している「chart project® for SDGs in ISHIKAWA」。小松市に続き本プロジェクトに参加したのが、石川県北東部、能登半島の最先端に位置する珠洲(すず)市だ。自然資源と人的資本、社会文化資本を活用した持続可能な地域をめざす同市は、2019年6月から内閣府の「SDGs未来都市」に選定されており、2030年SDGs達成に向けた取り組みを進めている。2017年に開催した「奥能登国際芸術祭」を通じて、アートによる地域力の再発見・発信を経験している地域でもあり、chart project for SDGs in ISHIKAWA に積極的に名乗りを上げた。

今回chart projectの作品を制作するアーティストとして、珠洲市が希望したのは、連携協定を結ぶ金沢美術工芸大学の学生だった。珠洲市は、SDGsの達成目標として若年層増加や人材育成を掲げており、本プロジェクトの作品制作過程そのものが、こうしたSDGs達成に向けた一歩となった。

  

 

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chartistとして参加した金沢美術工芸大学の竹村 美紅さん

 

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珠洲市職員が金沢美術工芸大学を訪問し、説明会を行った

 

 

珠洲市職員が金沢美術工芸大学を訪れ、地域の課題を共有

 

1月下旬、珠洲市企画財政課職員の金田直之さんと西靖典さんが、珠洲市と連携協定を結ぶ金沢美術工芸大学を訪問。寺井剛敏教授と視覚デザイン専攻の3名の学生に向けて、珠洲市の歴史風土や、現在抱えている社会課題とその背景について説明会を行った。今回chart project for SDGs in ISHIKAWAとして表現するのは、「環境」「社会」「経済」の3つの社会課題に関するグラフ。学生1人につき、それぞれ1つの課題を担当し作品を制作する。プロではなくあえて学生に依頼することで、プロジェクトの制作過程そのものが、関係人口の増加や人材育成にもつながることとなった。

 

 

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珠洲市のchart project作品を制作した視覚デザイン専攻の3名の学生。向かって左から、渡辺さん、日下部さん、竹村さん

 

 

 

 

 

 

 

 

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多様な海藻群と能登の文化的豊かさを重ねて

 

珠洲市職員の訪問後に行われた、学生たちによるミーティング。真っ先に、藻場面積のグラフを担当したいと言ったのが竹村さんだった。
「私は金沢の出身で、同じ県内のことなのに、まったく”藻場”という存在を知らなかったんです。能登半島の藻場面積が全国でも1位というようなレベルで大きいということも、今回初めて知りました。しかも能登の人たちは、四季折々さまざまな海藻を料理して食べていて、そんな食文化も魅力的だと感じました。藻場が大きいということだけでなく、そうした能登の文化を含めた豊かさを、作品にしようと考えました」(竹村さん)

  

 

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能登半島の藻場

 

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能登の市場では、山の幸や海藻など海の幸が並ぶ 豊かな自然が生み出す食文化

 

竹村さんが選んだのは、海域別藻場面積の全国順位を表す棒グラフ。日本の海域のなかで、能登半島の藻場面積が最も広いことを示している。「私のグラフは直線による棒グラフで、一見すると無味乾燥で、豊かさとは対極にあるようなグラフです。これをどう豊かにするか。思い浮かんだ緑のイメージを軸に、いろんな直線と緑を重ね合わせることにしました。能登半島の藻場に広がるさまざまな海藻も、同じ緑でもそれぞれに違う。さまざまな緑色を重ねて、重なったところはまた新たな緑色になって…豊かさを表現できるかなと思いました」

 

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線と色を重ね合わせる。魚を小さく入れ、スケール感も出した

 

竹村さんにとって、グラフはどちらかといえば「苦手なもの」だった。しかし、chart projectの作品にすることで、込められる情報そのものが豊かになると感じたという。

「グラフから感じ取れる情報は、能登半島の藻場面責が全国1位ということだけ。数字だけで味気ない、だから今まで興味を持てなかったのかなと。なんでこの数字になっているのかとか、じつは大きいだけじゃないとか、制作過程で知り、それを絵にしたことで、感じ取れる情報が豊かになりました。数字だけじゃなく、風土文化未来へのメッセージも込めることができるのが、chart projectなんですね」

 

 

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今回はデジタルによる制作を行った

 

 

 

 

 

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社会課題に対する自分の在り方を見つけた 

 

就職活動を通じ、言葉としてSDGsのことは知っていたという竹村さん。とても難しく、自分とは遠い話と考えていたが、今回chart projectに参加することで、自分のなかにSDGsをどう位置づけるかという自分の態度を獲得することができたという。

「SDGsに取り組んでます、と言うこと、考えているように見せることは簡単ですが、本当に解決するとなるとすごく難しい。真剣に取り組んだら、車は運転できないなとか、作品に使う素材とか機材とかはどうなんだろうとか、ひとつひとつ考えてしまって何もできなくなる。だから考えるのをやめてしまっていた部分があったと思います。でも、今回chart projectに参加して、いつも食べている地元の海草がなくならないために、ポイ捨てって海草に悪いなあ、とか、ちょっとストロー使うのやめよう、とか、自分の生活とつなげて考えられるようになりました。作品制作を通じて、社会課題に対して、どういう気持ちを持っていればよいか、ということを考えられたように思います」(竹村さん)

 

 

  

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泉谷 満寿裕 珠洲市長 

 

珠洲市長からのメッセージ

 

珠洲市の魅力である里山里海の豊かさを、個性的な感性で表現していただき、ありがとうございます。この素敵なアートを通して、市民の皆様をはじめ、多くの方が珠洲市や日本、そして世界の未来を考え、SDGsの達成に向けた具体的な行動につながることを願っています。

 

 

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「珠洲市の藻場面積」のグラフを提供してくださった能登SDGsラボ サブコーディネーター 高 真由美さん

 

能登SDGsラボ 高さんからのメッセージ

 

珠洲市に住んでいる私も、このグラフを見て、能登半島に存在する藻場の面積が全国1位だと知り驚きました。「かさなる海の森」は、たくさんの緑色で豊かな海が表現されており、海の中の音や揺れている海草の様子、天日干しをしている時の磯の香を思い出しました。海はすべてとつながっている・・・そんな能登の豊かな自然環境が表現されていて、とても嬉しいです。

 

 

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