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ABOUT ART
「SAND GRAPH」(砂のグラフ)は、小松市のここ40年の年間最高気温の推移を表す折れ線グラフをモチーフにした作品です。 器の中に砂を詰めてひっくり返すことで、砂のグラフを立体的につくりだし、小松市の人々が親しむ日本百名山の白山(はくさん)、県内で唯一自然のままの姿で残る湖である木場潟(きばがた)をジオラマで表現。「小松市のシンボルである木場潟、雪化粧をまとう白山をいつまでも見続けられるように」との想いを込めてつくりました。 また、「SAND GRAPH」は、すでに完成された作品を観るだけではなく、参加者自身が作品を完成させることで、テーマである社会課題について自ら考えてもらうことを目指した参加者体験型のアートでもあります。砂遊びが大好きな子どもたちにとって親しみやすく、親子で楽しみながらつくることができます。 地球温暖化を食い止めて、未来のグラフの形を変えられるかは、これからの私たちの行動次第。続きの砂を盛るのか?削るのか?「SAND GRAPH」を通して、そんな会話が生まれることを願っています。
ABOUT GRAPH
小松市の年間の最高気温の推移
小松市の最高気温は、1979年から2018年の約40年間で約2.1℃上昇。気温の上昇により、小松市の自然や生態系に変化が起きてしまう可能性があります。 | 出典 : 気象庁HP(過去の気象データ) | グラフ提供:小松市
藤井 賢二
株式会社たき工房 Experience Design Unit / 執行役員 / クリエイティブディレクター多岐に渡る商品やファッション広告のアートディレクションを経験し、自社ブランドデザイン室でも登壇を行うなど企業ブランド戦略にも参画。同社の社会貢献活動「TAKI Smile Design Labo」の中心メンバーとして、社会課題に寄り添うプロダクトデザインを数多く発表。| 受賞・展示歴:Milan Design Week TOKYO AWARD 2020/K-DESIGN AWARD 2019 winner/ASIA DESIGN PRIZE 2019 Finalist WEB:株式会社たき工房
MAKING STORY
小松市との取り組み
先進的なまちづくりが評価され、2019年、国の「SDGs未来都市」の選定された小松市。さらなるSDGsに対する取り組みとして、気候変動について市民の方々に啓発するため、chart project for SDGs in ISHIKAWAに参加。
今回のプロジェクトでは、小松市で開催された「サイエンス・フェスタ2019」に出展し、「小松市の年間の最高気温の推移」のグラフをもとに制作したchart作品を初めてお披露目した。
chart project for SDGs in ISHIKAWAの第一号となった作品をつくったアーティスト(CHARTist)は、株式会社たき工房のクリエイティブディレクター 藤井賢二さん。藤井さんにとってchart作品を手がけるのは、大好評だった石川の森プロジェクト「MISIAの里山ミュージアム2018」以来2度目となる。
作品を制作する過程
chart projectでは、CHARTistが作品を制作するにあたり、テーマとなる社会課題について理解を得るために、パートナーから直接、作品のモチーフとなるグラフやその背景について説明していただく機会を設けている。
今回は、小松市役所のご協力により、小松市の自然や文化を伝える観光施設をご案内いただきながら現地を視察し、小松市長と藤井さんとの対談も行なった。
日本百名山の白山(はくさん)を一望できる木場潟公園にて。野鳥や水生植物などが生息する貴重な生態系を守るため、小松市は水質や周辺環境の保護にも積極的に取り組んでいる。
小松市役所の江口さん(写真左)は、「白山や木場潟こそが我々のふるさとの象徴であり、この景色が変わらないことを願う」と語る。
こまつ曳山交流館「みよっさ」
にて。高さ9メートルもの豪華絢爛な曳山が常設展示されている。毎年5月、町内ごとの曳山が8基集結する、小松市最大のお祭り「お旅まつり」が開催。地元の子どもたちが小松市指定文化財である「曳山子供歌舞伎」を演じる。
石川県の伝統工芸である九谷焼を学べる「CERABO KUTANI/九谷セラミック・ラボラトリー」にて。建築家 隈 研吾氏の設計による施設では、九谷焼の工程を体験できる。
九谷焼の原材料である陶石の砂にふれ、chart作品へのインスピレーションを得る藤井さん。
「普段から作品づくりに取りかかる前は参考となる現場を訪れていますが、今回は小松市の方々にお会いして、自然環境について現地の方ならではの実感を交えたお話を伺えたことで、自分だけで視察するよりも理解が深まりました」(藤井さん)
和田愼司小松市長とCHARTist藤井氏との対談。小松市役所にて。
自ら勧進帳の台詞を披露し、歌舞伎のまちである小松を紹介してくださる和田市長。伝統芸能「曳山子供歌舞伎」を子どもたちが一年間かけて練習し、まち全体で江戸時代から続く文化を大切に守っている。また北陸の空の玄関である小松空港や、小松市にある世界的な建設機械メーカーについてなど多彩なお話を伺った。
中でも、日本海や山林や山里のある小松の地は豊かな自然を保有しており、木場潟から望む雄大な白山の眺望は絶景で、潟を囲うように整備された木場潟公園は、野鳥や水生動植物の保護や観察などを行う環境学習の場としても活用されているとのこと。「今回のchart projectの作品は、見る人がそんな小松市の豊かな自然を、これからも守っていきたいと思ってもらえるような作品にしてもらいたいです。」(和田市長)
「SDGs未来都市」に選定され、SDGsの達成に向けて積極的に取り組む小松市。
今回の対談の様子は『news zero』(テレビ金沢)でも放映された。
作品の制作へ
小松市の視察後、藤井さんが作品のテーマとなる気候変動についてイメージをふくらませて誕生したのが、参加者が自ら体験することで完成する作品「SAND GRAPH」。
参加者体験型作品は、藤井さん個人の創作活動として初めての挑戦、chart projectとしても初めてグラフを立体的に表現した記念的作品となった。
「最初はイラストを描こうか、写真をコラージュしようか、もしくは映像にしたらどうかなど、さまざまな手法を考えていました。そんなとき、今回のイベントは親子連れが多いと伺い、作品を楽しんでもらうことはもちろん、より作品に向き合い、その背景が意味するテーマに少しでも気づいてもらいたいと考えた結果、参加者自身が砂でつくる作品を思いつきました。実際は、子どもたちが深く考えることなく、単純に砂で遊べて楽しいという場になるかもしれません。ただ、大人も一緒に交わることで、この形にはこういう意味があるんだよという親子の会話が生まれるかもしれない。自ら作品を体験することで記憶に残り、社会課題について理解が深まるきっかけになればと思います」(藤井さん)
「小松市の年間の最高気温の推移」の折れ線グラフデータを取り込んで、砂を入れる器の型を作成。
雪が積もる白山、白山を望む木場潟をジオラマで再現。同時に山脈は年々進む温暖化を表し、気候変動の脅威を伝える。
そして2019年12月14日(土)、「SAND GRAPH」の初お披露目となったイベント「サインエス・フェスタ2019」がサイエンスヒルズこまつにて開催。
当日は、親子連れを中心とした来場者の方々に、気候変動が小松市の自然に及ぼす影響について、作品を通じて考えてもらう体験を提供した。
「会場では、親子が笑顔で話しながら作品づくりを楽しむ様子を目にすることができて、クリエイター冥利に尽きましたね」(藤井さん)
今回、chart project for SDGs in ISHIKAWAに参加が決まってから、SDGsについて自ら勉強したという藤井さん。自然を守るためにどのような目標があり、どのような取り組みが行われているかを改めて学ぶいい機会になったと語る。
「何か社会課題を表現したいと考えるクリエイターは、実は多いのではないかと感じています。chart projectの醍醐味は、まずCHARTist自身が作品を制作する過程でテーマとなる社会課題と向き合い理解を深め、さらに完成した作品を通じて観る人に伝えられること。ぜひ、たくさんの方々にchart projectに参加してもらいたいですね」(藤井さん)