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WORKSHOP | chart project

子どもたちから生まれるSDGsへの探究心
アートフェスティバルを通してブリティッシュ・スクール・イン東京が紡ぐ未来

2024.3~6

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右から、ブリティッシュ・スクール・イン東京  Head of Secondary LibraryおよびBST Festival of the Artsの実行委員長のLisaさん、PTA幹事のAliceさん、chart project®︎やまもと

 

自由な発想で、社会課題に触れるきっかけをつくりたい。そんな思いとともに始まったchart project®︎は、東京都にあるインターナショナルスクール「ブリティッシュ・スクール・イン東京(BST)」と連携し、ワークショップの開催や、全校生徒が参加できるアートコンペティションを実施しました。受賞作品はBSTの麻布台ヒルズキャンパスなどで展示されました。子どもたちの豊かな発想が吹き込んだ、新たな視点とは? BSTの Head of Secondary LibraryおよびBST Festival of the Artsの実行委員長のLisaさんと、発起人でPTA幹事のAliceさんにお話を聞きました。

 

 

日本での生活に根ざした課題の探求を
唯一無二のアートで表現して 

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chart project®︎担当 やまもと あさみ(以下、やまもと):はじめてAliceさんからご連絡をいただいた際、その熱意がひしひしと伝わってきました。chart project®︎としてもインターナショナルスクールとの取り組みは初めてであり、企画書を拝見しながら非常にワクワクしたことを、今でも鮮明に覚えています。ご興味を持っていただいたきっかけはなんだったのでしょうか。

 

Alice:2023年2月、本校のPTA執行部は、学校の年次基金から支援されるコミュニティプロジェクトを提案する機会をいただきました。そこで、個人的にも強い関心があるSDGsについての意識を高めたいと考え、日本の地域社会にも関連するプロジェクトを提案しようと思いました。こうした中、自治体連携の記事をいくつか読んでいる中でchart project®︎を知り、私が思い描いていたこととの高い親和性を感じました。

 

やまもと:ありがとうございます!具体的には、どのような点を魅力に感じていただいたのでしょうか。

 

Alice:コンセプトがシンプルで理解しやすいところ、それでいて、データをもとにしながら創造的な解釈や個人的な表現を取り入れやすく、SDGs全体を網羅している点が非常に魅力的だと感じました。

 

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 Lisa:SDGsに焦点を当てたプロジェクトを実施することが、BSTのカリキュラムに昨年から組み込まれました。しかし、生徒や保護者の中には、SDGsについて知ってはいるけれど、深く考えを巡らせたり関わったりしたことがない人もいます。こうした中、chart project®︎を通じて、SDGsへの理解と意識が一気に高まっていくだけでなく、子どもたちの自立心を育み、その学びをまたクリエイティブな方法で表現することができるのは大きな魅力です。また、日本での生活や学校環境に関連するものとしてSDGsを捉えられるようになったことで、SDGsは単なる一つの問題ではなく、私たちの生活すべてに関わっていることだと感じることができたのではないでしょうか。このようにさまざまな教科を横断したアプローチに深い意義を感じます。

 

山よりも高いプラスチックゴミに

希望を象徴するタンポポに

 

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やまもと:Year4(日本の学年で小学校3年生)とYear8(日本の学年で中学校1年生)でのchart projectのワークショップ実施だけにとどまらず、約1,100名の全校生徒へと広げたchart projectのアートコンペティションも開催されました。特に印象に残っている作品について教えていただけますか。

 

Lisa:頭に浮かぶアート作品が多すぎて、1つを選ぶのはとても難しいです。

 

たとえば、ある生徒は環境汚染の影響と動物の生息環境への影響を調べ、2つの異なるグラフを重ね合わせた作品をつくりました。煙を放出するタバコになぞらえた工場をデザインに取り入れ、プラスチック袋は山をも超えてしまう人工物の量を表現していました。人間が生み出した汚染物質が、大都市に閉じ込められた動物をはじめとする野生動物の命を絶滅の危機に追いやっていることを暗示しています。

 

また、ある生徒は少子高齢化社会を表すグラフを用いて、子育て支援やジェンダー平等の問いを投げかけ、希望の象徴としてタンポポを添えています。非常に洞察力のある作品を作り上げていました。海洋汚染をテーマとした作品では、漁網にゴミが絡まっているようすをあらゆる素材を使いながら表現し、多様な表現力は目を見張るものがありました。なので、生徒たちがグラフからインスピレーションを得て、創造的な作品を生み出したこと自体が何よりも心に残っています。

 

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Alice:Year4とYear8を対象としたワークショップから生まれた作品の質の高さには、大変感銘を受けると同時に、生徒たちを誇らしく思いました。初等教育科子どもたちの作品は、鮮やかな色彩とイマジネーションにあふれ、リサイクル素材などを組み合わせながら、想像もつかないような独創性を感じました。2004年から2022年までの日本におけるプラスチックボトルの重量を示すグラフを使った作品は、ペットボトルや使い捨てのカトラリーなど身近にあるものを使って表現していました。また、中等教育科生徒たちは作品の中に多くの要素を盛り込んでおり、緻密で建設的な文脈を持ち、見る人にじっくりと考える機会を与える洗練されたデザインが印象的でした。例えば、国内企業で代表として活躍する女性の人数を取り上げた作品は非常に興味深いと感じました。

 

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Year4は「港区の緑化率」、Year8は各自関心のあるSDGsからリサーチをして使用するグラフを選定しました。

 

やまもと:優秀作品を選ぶのは非常に難しかったのではないでしょうか。実際に選考に参加したchart projectの藤田からも「切り口も表現方法も多様で、それぞれに良い点がある中、特に優れた作品を選び出すのは難しかった」という話をききました。何か選考の基準などはあったのでしょうか。

 

Alice:これはコンペティションではありますが、同時に学びや教育の機会でもあるため、スキルやテーマに関して厳選しすぎないようにしました。クリエイティビティや想像力、素材の使い方が際立つものを評価することを主な基準に考えていました。

 

Lisa:作品を一堂に集め審査を行いましたが、どれも力作ばかりでした。ですので、どれが優勝作品に選ばれてもおかしくはないと思いました。

 

 

好奇心を刺激するコンペティションと展示を通して
波及していくSDGsへの理解と取り組み

 

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BST麻布台ヒルズキャンパスでは15点の優秀作品を展示し、表彰式も行なわれた。

 

やまもと:受賞作品がBSTの麻布台ヒルズキャンパスなどでも展示され、保護者のみなさんも含めて多くの方にご覧いただけて私たちも嬉しかったです。アートフェスティバルの取り組みと展示の経緯について教えていただけますか。

 

Lisa:Aliceがchart projectを学校の基金に提案したのと同じ時期に、私は「BST Festival of the Arts」アートフェスティバルを企画しました。このフェスティバルの目的は、アートを通じて新たな可能性を見出し、共感と理解を深めることです。麻布台ヒルズキャンパスで行われたフェスティバルでは、美術、演劇、文学、音楽の4分野にわたり、展示やコンペティション、パフォーマンスを通じてBSTの生徒たちの作品が紹介され、祝福される場となりました。フェスティバルには20以上のプロジェクトが展開され、著名なアーティスト、作家、音楽家と緊密に協力しながら作り上げられました。環境問題やDE&I(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)に焦点を当て、アートを通じて意識を高めるというchart project®︎の取り組みは、フェスティバルの理念と非常に合致しており、一緒に進めることは自然な流れだったと感じています。

 

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やまもと:生徒や保護者からはどのような反応がありましたか?

 

Alice:非常に好意的なフィードバックが多かったです。「グラフについて調べたり、色を作ったり、混ぜたりするのがとても楽しく、アートとして自分らしく表現することができた」や「面白そうだったので友達を誘って一緒に取り組めたことが楽しかったです。SDGsについて楽しくクリエイティブに学べて、来年もやりたい」といった声が初等教育科の生徒からありました。また、保護者からは、「科学、芸術、サステナビリティを結びつけ、学校コミュニティにSDGsと自分たちの創造性を探求する機会を与える素晴らしいプロジェクトだと感じました。特に中等教育科が制作した作品には、その完成度の高さに驚かされました。見れば見るほど奥が深い。そして、多くの人の目に留まる場所に展示され、QRコードで作品の詳細を確認できるような演出も良かったです」といった意見もあり、大成功だったと感じています。

 

Lisa:すべての生徒や教職員、保護者がコンペティションに応募できたのですが、初開催であったこともあり、参加に踏み切れなかった人もいたようです。ですが、一週間にわたって展示された作品をみた生徒たちは、「参加すればよかった」「自分だったらこうした」などと話しており、次回は参加したいと多くの人が思ってくれたことは非常に素晴らしいことだと思います。私たちが求めていたのは、まさにこのような関心を引き出すことです。コンペティションに参加しなかったとしても、アイデアやコンセプトに共感し、「自分だったらどうするだろう?」と考えてくれることが大切だと思うのです。

 

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やまもと:ポジティブなお声をいただけて私も嬉しいです!社会課題のリサーチ、グラフの選定、アート作品の制作、展示を通じての啓発、まさにBSTの生徒さんはchat project®︎のプロジェクトリーダーとして自発的に取り組んでいただけたことに私も感銘を受けています。今後、どのような広がりや発展に期待していますか。

 

Alice:またchart project®︎のチームとともに、SDGsに情熱を注ぐアーティストや専門家と連携して、生徒や保護者向けのワークショップを開催したいです。より多くの人のSDGsへの理解が実践的に深まるだけでなく、私たちが大切にしていることも示すことができます。そして、日本から世界へ、次世代とともにSDGsを伝え、推進していけることに大きな意義があると確信しています。

 

Lisa:またこうした展覧会を開催したいですね。たくさんの発見とアイデアが生まれるのが楽しみでなりません。

 

 

 

◼️「ブリティッシュ・スクール・イン東京 Festival of the Arts」概要

ブリティッシュ・スクール・イン東京(BST)のアートフェスティバルの1つの取り組みとして、Year4、Year8の約200名を対象にワークショップを実施し、その作品を各BSTのキャンパスで展示を行なった。

 

グラフ提供:ブリティッシュ・スクール・イン東京の生徒たち

 

日時 2024年3月〜2024年6月
主催

ブリティッシュ・スクール・イン東京

会場

ブリティッシュ・スクール・イン東京 麻布台ヒルズキャンパス、昭和キャンパス

 

Partner:ブリティッシュ・スクール・イン東京

 

撮影:堀篭 宏幸 編集:大庭 美菜

その他のワークショップ

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「せかいをめぐるchart project®ワークショップ」at東武ワールドスクウェア

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日光市「グラフに絵をかいてみよう!」atイオン今市店

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八王子芸術祭「音楽やアートを五感で楽しもう!」